ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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HIRANO Tomoki
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大学院生
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Robins, C. (2005) Engaging with Curating. International Journal of Art & Design Education 24(2) pp.149-158
Creative Connectionsという美術館教育に関する研究プロジェクトの一環で、ヴィクトリア・アルバート美術館のキュレーティング作業に参加した美術・デザインの教師たちが、キュレーティングという役割について批判的になっただけでなく、展示を教育資源として活用する志向を見につけたと、インタビューやアンケートの結果から報告している。これは美術・デザインの教師たちの専門性の向上のためにも重要なポイントだという。
インタビューやアンケートの結果があまり詳しく載っておらず、論文というよりも報告でしかないが、単に美術作品を見るのではなく、キュレーティングという作業への気づきがあることが、より批判的な理解を生むというのは面白い。引用されているMacDonald & Silverstoneの指摘のとおり、展示はさまざまな力学の中で生成されているものであり、展示されているものを鵜呑みにしてはならず、批判的な検討をしなければならないのだ。
Creative Connectionsという美術館教育に関する研究プロジェクトの一環で、ヴィクトリア・アルバート美術館のキュレーティング作業に参加した美術・デザインの教師たちが、キュレーティングという役割について批判的になっただけでなく、展示を教育資源として活用する志向を見につけたと、インタビューやアンケートの結果から報告している。これは美術・デザインの教師たちの専門性の向上のためにも重要なポイントだという。
インタビューやアンケートの結果があまり詳しく載っておらず、論文というよりも報告でしかないが、単に美術作品を見るのではなく、キュレーティングという作業への気づきがあることが、より批判的な理解を生むというのは面白い。引用されているMacDonald & Silverstoneの指摘のとおり、展示はさまざまな力学の中で生成されているものであり、展示されているものを鵜呑みにしてはならず、批判的な検討をしなければならないのだ。
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Costantino, T.
Educational Theory. 54(4) pp.399-417 2004年
『経験としての芸術』やそれ以前のエッセイから、デューイの美術館へのアンビバレントな態度を分析する。デューイによれば美術館は美的経験を人々の日常生活から切り離されたところに隔離してしまうと批判する一方で、美的感受性を育む場としての美術館の可能性を指摘している。彼の美術館論の背景には、教え子であり、実業家であったアルバート・バーンズが見え隠れする。バーンズは美術館ではなく美術教育のための財団を作り、日常生活の中の美術・美的感受性を教育することに努めた。厳密に言うとバーンズの財団はデューイの思想と相反するところを持っていたが、彼の存在は非常に重要であった。
デューイの教育論の中心には、日常生活の中の学び、作業による学びを重視するという視座が見られるが、彼の美術館論も人々の日常生活を重んじる点で共通していると言うことができるだろう。実際、『学校と社会』の中でも彼は、実験学校において主要な役割を担うものとしてミュージアムを中心に配置している。ミュージアムはデューイの思想ともつながりを持つのである。
Educational Theory. 54(4) pp.399-417 2004年
『経験としての芸術』やそれ以前のエッセイから、デューイの美術館へのアンビバレントな態度を分析する。デューイによれば美術館は美的経験を人々の日常生活から切り離されたところに隔離してしまうと批判する一方で、美的感受性を育む場としての美術館の可能性を指摘している。彼の美術館論の背景には、教え子であり、実業家であったアルバート・バーンズが見え隠れする。バーンズは美術館ではなく美術教育のための財団を作り、日常生活の中の美術・美的感受性を教育することに努めた。厳密に言うとバーンズの財団はデューイの思想と相反するところを持っていたが、彼の存在は非常に重要であった。
デューイの教育論の中心には、日常生活の中の学び、作業による学びを重視するという視座が見られるが、彼の美術館論も人々の日常生活を重んじる点で共通していると言うことができるだろう。実際、『学校と社会』の中でも彼は、実験学校において主要な役割を担うものとしてミュージアムを中心に配置している。ミュージアムはデューイの思想ともつながりを持つのである。
Housen, A.
ILVS Review: A Journal of Visitor Behavior. 2(2), pp.213-237 1992年
アビゲイル・ハウゼンによる美的感受性の発達に関するフレームワークの、ミュージアムにおける適用。小学校の2年生と4年生に対してミュージアムエデュケーションのプログラムを行い、その後Aesthetic Development Interview(ADI)という手法を用いてその効果を測定している。ADIは美術作品を見て思ったことを語ってもらうという手法である。この手法は小学校低学年から可能であり、あらゆる発話をコーディング可能であることから、初心者へのミュージアムエデュケーションの効果の検証のためにも有効であることが示唆された。
パーソンズと同様、ハウゼンも美的感受性の発達を一定の段階(ここでは五段階)を踏んで進歩していくものであるとしており、そのための分析フレームワークは明快で分かりやすい。しかし、やはりここでも美術「作品」の鑑賞にポイントが置かれていることは否めない。
ILVS Review: A Journal of Visitor Behavior. 2(2), pp.213-237 1992年
アビゲイル・ハウゼンによる美的感受性の発達に関するフレームワークの、ミュージアムにおける適用。小学校の2年生と4年生に対してミュージアムエデュケーションのプログラムを行い、その後Aesthetic Development Interview(ADI)という手法を用いてその効果を測定している。ADIは美術作品を見て思ったことを語ってもらうという手法である。この手法は小学校低学年から可能であり、あらゆる発話をコーディング可能であることから、初心者へのミュージアムエデュケーションの効果の検証のためにも有効であることが示唆された。
パーソンズと同様、ハウゼンも美的感受性の発達を一定の段階(ここでは五段階)を踏んで進歩していくものであるとしており、そのための分析フレームワークは明快で分かりやすい。しかし、やはりここでも美術「作品」の鑑賞にポイントが置かれていることは否めない。
マイケル・J・パーソンズ
法政大学出版局 1987=1996年
人が絵画を見るときの見方、美的経験が一定の認知的段階を経て発達していくことを、幼児から大学教授まで及ぶ、300以上のインタビューから明らかにしていく一冊。インタビューは大きな絵の複製を見せながら個別に行われた。彼はピアジェとコールバーグの認知発達論を下敷きに、
第一段階-お気に入り
第二段階-美とリアリズム
第三段階-表出力
第四段階-様式とフォルム
第五段階-自立性
という段階を設定し、「主題」「表出」「媒体、フォルム、形式」「判断」の4つの要素に関して、絵を見るときに用いられるものの重点が置き換わっていく。ここで注意したいのは、「主題」は第一段階から見られる要素だが、だからといってこれが低い次元のものではなく、高次の発達段階においても見られるものだということである。つまり、各段階はそれぞれの要素の組み合わせなのだ。また、第二、第三段階までは年齢とともに発達するが、第四、第五段階といった高次の段階には、特別な訓練を受けなければ到達することは難しい。
これは純粋に絵画を見るということに焦点を当て、実験室的な環境で個別にインタビューした研究であり、美術館のような空間性、文脈性を帯びた場所での鑑賞はまた違ったものになるだろう。だが、美的経験が感性のようなあいまいなものに規定されるのではなく、一定のプロセスをたどって発達することを明らかにした点は大きい。
杉林英彦
『美術教育学 : 大学美術教科教育研究会報告』(24) pp.161-171 2003年
三重県立美術館で行われた子ども対象のギャラリートークについて、アビゲイル・ハウゼンの発達心理学的測定法を適用し、鑑賞教育の評価方法を探る。小学生7人グループと講師にテープレコーダーを持ってもらい、ギャラリートークにおける言語活動全体を記録し、「思考ユニット(thought unit)」ごとに美的鑑賞の5つの発達段階を当てはめる。その結果、トークを進めるうち、子どもたちの発話に、より高次の(Stage I/II以上の)思考ユニットが増えていく傾向にあることがわかった。
この研究のオリジナリティは、講師の発話にも着目し、子どもたちの変化の要因を探ろうとしている点、具体的な美術鑑賞の場(美術館)における評価の適用を目指している点だ。回数を重ねていかないとまだよく分からないことは多いが、美術館における鑑賞教育の評価という考え方は面白い。
『美術教育学 : 大学美術教科教育研究会報告』(24) pp.161-171 2003年
三重県立美術館で行われた子ども対象のギャラリートークについて、アビゲイル・ハウゼンの発達心理学的測定法を適用し、鑑賞教育の評価方法を探る。小学生7人グループと講師にテープレコーダーを持ってもらい、ギャラリートークにおける言語活動全体を記録し、「思考ユニット(thought unit)」ごとに美的鑑賞の5つの発達段階を当てはめる。その結果、トークを進めるうち、子どもたちの発話に、より高次の(Stage I/II以上の)思考ユニットが増えていく傾向にあることがわかった。
この研究のオリジナリティは、講師の発話にも着目し、子どもたちの変化の要因を探ろうとしている点、具体的な美術鑑賞の場(美術館)における評価の適用を目指している点だ。回数を重ねていかないとまだよく分からないことは多いが、美術館における鑑賞教育の評価という考え方は面白い。
(1) Stage I:作品理解につながる鑑賞者個々の発見を促す発話や鑑賞者の発話内容の受容と確認に関する発話。
(2) Stage I/II:鑑賞者に複数の作品に関する比較を促す発話や他者の意見・考えと鑑賞者個人とを検討させることを促す発話。
(3) Stage II:鑑賞者個々の発話の根拠をもとめる発話や鑑賞者の考えをまとめた発話。また作品に関する一般的な解釈。pp.169