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ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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名前:
HIRANO Tomoki
職業:
大学院生
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Koran, J. J. Jr., Morrison, L., Lehman, J. R., Koran, M. L., and Gandara, L.
Journal of Research in Science Teaching, 21, 357-363 1984年

フロリダ州立博物館で234人の来館者を対象に行った実験。貝や化石などの展示物をただ眺める環境の部屋に置いた場合と、触ることができる部屋に置いた場合では、部屋に入る人の割合が有意に高かった。また、大人より子ども、男性より女性の割合が高かった。
科学系のハンズ・オン展示の学習に関する来館者研究として、基本的なものである。
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小川義和 下條隆嗣
『科学教育研究』28(3) pp.158-165 2004年

博物館の実物資料、専門指導者としての学芸員という2種類の学習資源が科学博物館における学習を規定するとして、小学6年生103名を対象にした化石に関する発展的学習の事後アンケートをとり、統計的な分析を行った。その結果、「実物が見られて良かった」と「今回の学習内容はおもしろかった」の項目が強い相関関係にあり、「科学博物館は楽しい」という意識につながることが分かった。最後には『博物館体験』の「ふれあい体験モデル」の重要性が指摘されている。
専門指導者としての学芸員、という部分はうまく結果が出ていないが、実物資料という部分はきれいに結果が出ている。博物館におけるモノによる学習という点はよく言われることだが、それを統計的に実証したことの意味は大きいだろう。たしかにモノによる学習は一定の効果をもたらすということができる。

科学博物館における学習活動は、このように博物館教育の特徴である実物による教育、博物館職員の専門性を踏まえ、学習者の自主的な活動に対応して展開されるものである。すんわち、科学系博物館において、学習者は博物館職員と交流を深めながら博物館の資料について探求していくことになる。pp.161
田代英俊
『日本科学教育学会年会論文集』(28) pp.95-98 2004年

2003年に行われたワークショップ「21世紀科学教育の創造」においてキーワードとして提示された「科学コミュニケーション」という概念について、当日の議論の内容と課題を報告する。参加者の問題意識はさまざまであり、「科学コミュニケーション」という言葉の意味合いも微妙に異なる。科学博物館のような生涯学習施設と来館者のコミュニケーションという意味合い、科学に関する政策推進に関する行政用語としての意味合い、市民が専門家とつながるための回路という意味合いなど、複雑に入り組んだ姿を見せている。
「科学コミュニケーション」という言葉の定義は難しいものであることがよく分かった。メディアリテラシー、ミュージアムのリテラシーという言葉にしても、語る主体によって意味は全く異なってくる。その点は頭に置いておかなければならないだろう。

文化、社会のリテラシーとしての科学コミュニケーションと、今すでに動いている政策用語の現実を両方勘案しながら、「自分が何をどのように伝えるのか」「相手が何を表現しているかをどのように理解するのか」「自分の考えとは何か」という自己表現としてのコミュニケーションの本質を見据えつつ、科学に関わる各方面の方々と交流し、各々の立場における科学教育、生涯学習のあり方を伺う予定である。その中で私たち自身の役割、機能を明確化し、今後の活動に一助にしたい。pp.98
Harriet R. Tenenbaum, Gabrielle Rappolt-Schlichtmann, Virginia Vogel Zanger
Early Childhood Research Quarterly, v19 n1 pp.40-58 2004年

ミュージアムと幼児教育の連携による科学学習の促進についてのプロジェクトについて、実践と評価を行った研究。アメリカの低所得層の子どもたちにボストン・チルドレンズ・ミュージアムで浮力に関する展示を見てもらい、事前事後に教室での学習をし、テストを行ったところ、統制群(国語、社会の展示を見る)よりも複雑な科学的概念の理解がなされていた。ただし、どれが浮いてどれが沈むかについての判断の質は向上してはいなかった。これは社会文化的/構成主義的コンテクストから理解されねばならない。
低所得層の子どもたちに対する教育的配慮、複雑な概念の理解の促進という点は、セサミストリートにつながるヘッドスタート計画、それをめぐる当時のさまざまな教育実践を想起させる。アメリカのチルドレンズ・ミュージアムにも、たしかに「格差改善」というミッションがあるわけで、似ているところがあるのは当然かもしれない。
Linda Ramey-Gassert, Herbert J. Walberg III
Science Education, v78 n4 pp.345-63 1994年

科学博物館の新しい教育的役割について、学校教育との関わり、モノを用いた学びによる科学リテラシーの育成という側面で、先行研究を整理しながら論じる(ここで「科学リテラシー」は「科学的なものの考え方」というような軽い意味で用いられている)。科学博物館はフォーマルな教育の場とは違うインフォーマルな教育の場であり、効果的な展示のデザインによって来館者を自発的な学習へといざなうべきである。量的な評価、エスノグラフィックな調査など、さまざまな手法のミュージアム学習研究がこれから行われるべきだとしている。
科学教育の場としてのミュージアムという考え方がよく見られ、学校教育との連携もよく語られているのは、他の種類の館に比べて「学習」という色合いが濃いと、学習という文脈で捉えやすいということだろうか。
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