忍者ブログ
ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
Profile
名前:
HIRANO Tomoki
職業:
大学院生
Search
[1]  [2]  [3
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Hooper-Greenhill, E.
International Journal of Heritage Studies. 10(2), pp.151-174 2004年

ミュージアムやアーカイブ、図書館のような文化施設の多くは公立であることから、文化行政への説明責任を担っている。つまり、ミュージアムにおいて来館者が実際に学習したかどうかを説明しなければならないわけだが、それにはそのための評価基準、フレームワークが必要になる。包括的学習成果(Generic Learning Outcomes)は、このような視点から開発されたミュージアム学習の効果を記述するフレームワークである。

1.知識と理解
2.技術
3.姿勢と価値観
4.楽しさ・触発・創造力
5.行動・態度・進歩

5つの要素からなり、そのどれもが必要不可欠であるということが示されている。ミュージアムにおける学習は単純な知識と理解だけではないのである。このフレームワークからすれば、ミュージアムを楽しむことができることも学びに含まれる。ここでの学びの概念は非常に広いということができる。
PR
Falk, J. 
Environmental Education Research. 11(3) pp.265-280 2005年

ミュージアムその他の環境で行われる学びを、学校などで行われるFormal learningに対するInformal learningとして捉えるやり方に代えて、Free-choice learning(自由選択学習)という考え方の有用性を提唱する。そこでは環境が学習のファシリテーターとして重要な役割を果たしており、その意味で自由選択学習は環境の学習であるということができる。また、そのような学習は単純なものではなく、複雑な社会的文脈の中で生起するものである。
インフォーマルとフォーマルという学習の分類の仕方には不自然さを感じていたのもあり、自由選択学習の概念がインフォーマルに代わるものになりうるという議論は説得的である。また、それが環境により規定されるという点も面白い。自由選択学習は環境の学習(ミュージアムのリテラシーの獲得)でもあると言うことができるだろう。
MacDonald, S. Silverstone, R.
Cultural Studies. 4(2) pp.176-191 1990年

イギリスのメディア研究者ロジャー・シルバーストーンによる、ミュージアムというフィクションの構造変化をロンドン科学博物館の常設展というテクストから読み解いた論考。彼によれば「ミュージアム」という概念は歴史的に構成されたフィクションである。そしてそれは、単に分類学にもとづいて視覚的に展示を構成する方向から、全体として物語を語る方向へと変わってきているという。
ミュージアムの展示をテクストとし、それに関してカルチュラル・スタディーズ的な分析を行っている。ミュージアムに関してメディアやコミュニケーションの観点から研究を行っている人物としては、フーパー=グリーンヒルと彼が代表的だろう。知見自体はそんなに目新しいものではないのだが、カルチュラル・スタディーズという立ち位置からのミュージアムの記述の仕方として、参照できる。
Peart, B.
Curator, 27, pp.220-237 1984年

a)言葉による展示、ラベルのみ、b)ラベルつき、絵の展示c)ラベルなし、モノの展示d)ラベルとモノがある普通の展示、e)それに音が加わった展示、計5種類の展示を用意して、どれが来館者の知識獲得や態度に影響するかを調査した研究。具体的な展示ほど知識獲得を促進することが分かったが、態度の変容についてははっきりした成果が出なかった。
エドガー・デールの理論を参照しながら、博物館の展示を具体性と抽象性という軸で分類したClassification of Exhibit Typeは面白い。デールと言えば、1940年代に視聴覚教育に関する理論を提示した学者であり、経験の具体性と抽象性という軸で教育メディアを分類した「経験の円錐」が有名である。博物館の展示を視聴覚教具・教材=メディアとして捉える視座がこの研究には見られる。
Melton, A. W.
Human Factors 14, pp.393-403 1972年

ミュージアムにおける来館者の行動に関する1935年の論文(美術館)と1936年の論文(科学館)の再録。前者では作品そのものよりも作品の展示のされ方が来館者の行動を規定していると述べ、後者では体験型の展示やプラカードの位置が来館者の行動に影響していることなどが述べられる。ここでの来館者の行動は滞留時間で計られる。
ギルマンによる1916年の記念碑的な論文「博物館疲労」以来、来館者研究は数多く行われてきたが、それから20年が経っても行動を滞留時間で記述するという行動主義的な手法は変わっていない。来館者の学習や認知の問題に焦点が当てられるようになるのは、もっとずっと先になる。来館者研究のパラダイムの転換があったのはここ10数年のことであると思われる。
忍者ブログ [PR]