ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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HIRANO Tomoki
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大学院生
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マイケル・J・パーソンズ
法政大学出版局 1987=1996年
人が絵画を見るときの見方、美的経験が一定の認知的段階を経て発達していくことを、幼児から大学教授まで及ぶ、300以上のインタビューから明らかにしていく一冊。インタビューは大きな絵の複製を見せながら個別に行われた。彼はピアジェとコールバーグの認知発達論を下敷きに、
第一段階-お気に入り
第二段階-美とリアリズム
第三段階-表出力
第四段階-様式とフォルム
第五段階-自立性
という段階を設定し、「主題」「表出」「媒体、フォルム、形式」「判断」の4つの要素に関して、絵を見るときに用いられるものの重点が置き換わっていく。ここで注意したいのは、「主題」は第一段階から見られる要素だが、だからといってこれが低い次元のものではなく、高次の発達段階においても見られるものだということである。つまり、各段階はそれぞれの要素の組み合わせなのだ。また、第二、第三段階までは年齢とともに発達するが、第四、第五段階といった高次の段階には、特別な訓練を受けなければ到達することは難しい。
これは純粋に絵画を見るということに焦点を当て、実験室的な環境で個別にインタビューした研究であり、美術館のような空間性、文脈性を帯びた場所での鑑賞はまた違ったものになるだろう。だが、美的経験が感性のようなあいまいなものに規定されるのではなく、一定のプロセスをたどって発達することを明らかにした点は大きい。
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C・G・スクリビン
ロバート・ヤコブソン編/篠原稔和監訳 食野雅子訳『情報デザイン原論』東京電機大学出版局pp.103-152
1999=2004年
博物館や美術館、ショッピングモールなど、利用者が自由に歩き回ることのできる情報空間のデザインについて、その特性から考えていく。学習環境としての博物館は、自由である分さまざまなマイナス要因が働いており、利用者の注意、学習への動機づけを阻害しかねない。展示という情報野の中には、さまざまなメッセージが含まれており、展示で伝えたいメッセージというのはその中のわずかな部分である。実際、博物館の展示のメッセージを正確に理解している利用者は少数でしかない。この困難さを克服し、博物館をよりよい学習環境にしていくためには、目的中心の情報デザインをする戦略が重要であると述べられる。目標を設定し、狭い情報野を歩き回るよう仕向けることで、学習のマイナス要素が軽減されるのである。
展示はコミュニケーション=情報の伝達であるという前提に立ち、そのデザインの必要性を述べているわけだが、展示全体で伝えたいものはあまりに大きく抽象的であるため、スモールステップでその目標に迫っていくというのは非常に合理的ではあるが、実際にそうデザインするのは難しそうだ。
なかでも、博物館のような公共的な場所における知識や概念の伝達はとくに難しい。これらの場でメッセージが伝達されるためには、「受け手」となるべき人々の自発的な努力が必要だが、その人たちの周りには注意をそらすものや他の選択肢がたくさんある。利用者が必ず注意を払う必要はなく、伝わってくるメッセージに注目するのも、これを無視するのも、また歪めるのも自由である。そのような状況では、受け手のニーズや正確に応えるだけでなく、彼らの注意を引き、引き留めておける情報システムをデザインすることが極めて重要である。pp.103
Eilean Hooper-Greenhill
Eilean Hooper-Greenhill (Eds.)The Educational Role of the Museum pp.28-43 Routledge; 2nd Revision 1999年
ミュージアム・スタディーズの世界的研究者アイリーン・フーパー=グリーンヒルの、コミュニケーションという側面から見たミュージアムに関する考察。ミュージアムのマス・メディア的な側面に着目し、シャノン=ウィーバーのコミュニケーションモデルをミュージアムに適用する。このモデルは、展示チームから来館者へメッセージが伝えられるということだけでなく、ミュージアムのさまざまな側面で適用することができる。またメッセージは一方通行ではなく、来館者からのフィードバックは展示チームにとって重要な情報となる。
『博物館体験』から、展示、イベント、建築、そしてショップやカフェ、出版物なども含めた丸ごとのコミュニケーションプロセスからミュージアムのイメージが形成されることも語られる。わかりやすい図が多用され、コミュニケーションとしてミュージアムを見ることの重要性、ミュージアムのメディアとしてのさまざまな特性が見えてくる。
小川義和
『日本科学教育学会年会論文集』29 pp.29-32 2005年
科学系博物館の役割について、科学リテラシー、科学コミュニケーションの文脈から見ると(1)子どもたちの体験的科学学習の場、(2)科学的な調査研究活動の体験の場、(3)生涯学習として人々と科学をつなぐ場という特徴が考えられる。そこで、マーケティングの方法論で博物館のオーディエンスを対象とした調査を行い、科学館と人々の関係は時間的な積み重ねが重要であることが分かった。この結果は森、小川、土屋、鈴木(2005)「ミュージアムの潜在的利用者を含めたマーケティング調査の方法論に関する研究」にも掲載されている。
科学系博物館の場としての意義が科学リテラシーの文脈で語られ、時間をかけた関係性の構築が重要であることが示されたことは重要である。博物館の学習体験、「博物館体験」の長期的な影響に着目することはこれからの博物館研究に重要な視点だろう。
『日本科学教育学会年会論文集』29 pp.29-32 2005年
科学系博物館の役割について、科学リテラシー、科学コミュニケーションの文脈から見ると(1)子どもたちの体験的科学学習の場、(2)科学的な調査研究活動の体験の場、(3)生涯学習として人々と科学をつなぐ場という特徴が考えられる。そこで、マーケティングの方法論で博物館のオーディエンスを対象とした調査を行い、科学館と人々の関係は時間的な積み重ねが重要であることが分かった。この結果は森、小川、土屋、鈴木(2005)「ミュージアムの潜在的利用者を含めたマーケティング調査の方法論に関する研究」にも掲載されている。
科学系博物館の場としての意義が科学リテラシーの文脈で語られ、時間をかけた関係性の構築が重要であることが示されたことは重要である。博物館の学習体験、「博物館体験」の長期的な影響に着目することはこれからの博物館研究に重要な視点だろう。
[…]科学に対するイメージは個人的な体験に基づいて形成される可能性があり、人々と科学との関係性の構築には、時間的な積み重ねが重要なファクターであると考えられる。今後は時間的な深まりの中で人々と博物館との関係性を精査し、その長期的な影響について検討する必要がある。pp.32
小川義和 下條隆嗣
『科学教育研究』28(3) pp.158-165 2004年
博物館の実物資料、専門指導者としての学芸員という2種類の学習資源が科学博物館における学習を規定するとして、小学6年生103名を対象にした化石に関する発展的学習の事後アンケートをとり、統計的な分析を行った。その結果、「実物が見られて良かった」と「今回の学習内容はおもしろかった」の項目が強い相関関係にあり、「科学博物館は楽しい」という意識につながることが分かった。最後には『博物館体験』の「ふれあい体験モデル」の重要性が指摘されている。
専門指導者としての学芸員、という部分はうまく結果が出ていないが、実物資料という部分はきれいに結果が出ている。博物館におけるモノによる学習という点はよく言われることだが、それを統計的に実証したことの意味は大きいだろう。たしかにモノによる学習は一定の効果をもたらすということができる。
『科学教育研究』28(3) pp.158-165 2004年
博物館の実物資料、専門指導者としての学芸員という2種類の学習資源が科学博物館における学習を規定するとして、小学6年生103名を対象にした化石に関する発展的学習の事後アンケートをとり、統計的な分析を行った。その結果、「実物が見られて良かった」と「今回の学習内容はおもしろかった」の項目が強い相関関係にあり、「科学博物館は楽しい」という意識につながることが分かった。最後には『博物館体験』の「ふれあい体験モデル」の重要性が指摘されている。
専門指導者としての学芸員、という部分はうまく結果が出ていないが、実物資料という部分はきれいに結果が出ている。博物館におけるモノによる学習という点はよく言われることだが、それを統計的に実証したことの意味は大きいだろう。たしかにモノによる学習は一定の効果をもたらすということができる。
科学博物館における学習活動は、このように博物館教育の特徴である実物による教育、博物館職員の専門性を踏まえ、学習者の自主的な活動に対応して展開されるものである。すんわち、科学系博物館において、学習者は博物館職員と交流を深めながら博物館の資料について探求していくことになる。pp.161