ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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HIRANO Tomoki
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大学院生
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竹内有理
『国立歴史民俗博物館研究報告』109 2004年
アメリカや欧米において実施されてきた展示評価・来館者研究の蓄積を、近世歴史展示に応用して実施された研究。展示の評価と改善・リニューアルを目的に行われた。著者は多くのイギリス来館者研究に触れており、その知識を日本の博物館の現場に生かした研究ということになる。展示室内における来館者のトラッキング調査と質問票による記憶および理解の調査という、オーソドックスなスタイルの来館者研究である。行動分析と質問票の共用により、行動主義的な来館者の分析だけではない、包括的な体験の理解を試みる。
展示評価というときには、展示を制作する側の意図と来館者の意図のせめぎ合い、そしてその“ずれ”がクローズアップされる。この研究でもそれは例外ではないが、それだけではない。彼女は最後に別の、非常に重要な可能性を示唆している。
『国立歴史民俗博物館研究報告』109 2004年
アメリカや欧米において実施されてきた展示評価・来館者研究の蓄積を、近世歴史展示に応用して実施された研究。展示の評価と改善・リニューアルを目的に行われた。著者は多くのイギリス来館者研究に触れており、その知識を日本の博物館の現場に生かした研究ということになる。展示室内における来館者のトラッキング調査と質問票による記憶および理解の調査という、オーソドックスなスタイルの来館者研究である。行動分析と質問票の共用により、行動主義的な来館者の分析だけではない、包括的な体験の理解を試みる。
展示評価というときには、展示を制作する側の意図と来館者の意図のせめぎ合い、そしてその“ずれ”がクローズアップされる。この研究でもそれは例外ではないが、それだけではない。彼女は最後に別の、非常に重要な可能性を示唆している。
いわゆる学校での教育(フォーマルエデュケーション)と違い、博物館の到達目標は多様であり、対象とする観客の年齢も知識や興味の度合いも様々であるため、到達目標に対する達成度による評価はそもそも博物館にはなじまない。それは博物館の展示を評価する一側面にはなり得てもすべてではない。むしろ、インフォーマルな学びの場として、観客の自由な選択や解釈を誘発していくことこそが博物館の展示が持つポテンシャルであり、強みであるといえる。pp. 356
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浜日出夫
『社会学ジャーナル』23 1998年
博物館には独自の展示構成のルール(博物館の文法)と、それを読み解くやり方(博物館のリテラシー)があることを、土浦市立博物館の歴史系展示への来館者の展示の見方を追うことで示そうとした調査研究。
歴史系展示においてはモノは分類され、クロノロジカルに並べられて解説文がつけられており、それを順番どおりに見る来館者はモノの配列から歴史そのものを読み取ることができ、博物館のリテラシーがあるとみなすことができるという。つまり、ここで博物館展示はひとつのテクストとみなされているのである。
調査は、展示室内の追跡調査と出口でのインタビューからなっており、順走ルートで見学した来館者は一般に見学時間も長く、インタビューによれば高学歴であることがわかった。あまりに単純な調査のため、これだけで何かを言うことができるとは思えないし、リテラシーの概念に対する理解も一面的だが(ここでは展示制作者=学芸員の意図どおりに歴史を理解すること、ということになる)、博物館のリテラシーに着目した社会学的実証研究として参考にできるか。
『社会学ジャーナル』23 1998年
博物館には独自の展示構成のルール(博物館の文法)と、それを読み解くやり方(博物館のリテラシー)があることを、土浦市立博物館の歴史系展示への来館者の展示の見方を追うことで示そうとした調査研究。
歴史系展示においてはモノは分類され、クロノロジカルに並べられて解説文がつけられており、それを順番どおりに見る来館者はモノの配列から歴史そのものを読み取ることができ、博物館のリテラシーがあるとみなすことができるという。つまり、ここで博物館展示はひとつのテクストとみなされているのである。
調査は、展示室内の追跡調査と出口でのインタビューからなっており、順走ルートで見学した来館者は一般に見学時間も長く、インタビューによれば高学歴であることがわかった。あまりに単純な調査のため、これだけで何かを言うことができるとは思えないし、リテラシーの概念に対する理解も一面的だが(ここでは展示制作者=学芸員の意図どおりに歴史を理解すること、ということになる)、博物館のリテラシーに着目した社会学的実証研究として参考にできるか。
[…]モノを分類し、クロノロジカルに並べ、解説パネルや年表や地図を付けて、さらに順路を決めても、それだけではモノの配列が歴史として現れるのにまだ十分ではない。モノの配列はさらに入館者によって歴史として読み取られなければならない。これは文の場合も同じである。いくら文法にしたがって適格に語が配列されていても、読む側にそれを読み取る能力がなければ、それは文としての意味をもたないのである。
Lois H. Silverman
Curator 38/3 pp.161-170 1995年
ミュージアムの展示において起こっているのは、来館者による「Meaning-Making」である、という考え方が普及してきている。「Meaning-Making」とは、文字通りに訳せば「意味生成」であり、ミュージアムの来館者がそれぞれ個人的なコンテキストを持って展示を自らの視点で解釈しているということを示す。
Silvermanによると、来館者は1.特別な知識、2.期待と規範、3.ライフイベントと状況の3つの経験領域をもってミュージアムを体験するという。そして、Meaning-Makingにおいては1.自己アイデンティティ、2.仲間、3.娯楽的動機と利益の3つの要素が重要だという。
Meaning-Makingという考え方に拠ることで、『博物館体験』と同様、来館者がそれぞれのアジェンダによって異なることを示し、ミュージアムのキュレーター、エデュケーターはより来館者に寄り添うべきであるとしている。
Curator 38/3 pp.161-170 1995年
ミュージアムの展示において起こっているのは、来館者による「Meaning-Making」である、という考え方が普及してきている。「Meaning-Making」とは、文字通りに訳せば「意味生成」であり、ミュージアムの来館者がそれぞれ個人的なコンテキストを持って展示を自らの視点で解釈しているということを示す。
Silvermanによると、来館者は1.特別な知識、2.期待と規範、3.ライフイベントと状況の3つの経験領域をもってミュージアムを体験するという。そして、Meaning-Makingにおいては1.自己アイデンティティ、2.仲間、3.娯楽的動機と利益の3つの要素が重要だという。
Meaning-Makingという考え方に拠ることで、『博物館体験』と同様、来館者がそれぞれのアジェンダによって異なることを示し、ミュージアムのキュレーター、エデュケーターはより来館者に寄り添うべきであるとしている。
佐藤優香
『博物館研究』38(2)pp. 12-15 2003年
博物館を使いこなし、展示やモノから情報を読み取る力として「ミュージアム・リテラシー」を定義した論文。その獲得のため、ここでは一例として学校と連携したワークショップの手法が紹介されている。
ミュージアム・リテラシーを身につけることは、現代情報社会で必要とされているメディアリテラシーの獲得にもつながると彼女は言う。博物館を利用できることが、現代社会におけるゆたかな学びへとつながるのだ。学校との連携だけに焦点が当てられているなど問題はあるが、ミュージアム・リテラシーという新しい概念を思い切って提起したという点では高く評価できるだろう。
『博物館研究』38(2)pp. 12-15 2003年
博物館を使いこなし、展示やモノから情報を読み取る力として「ミュージアム・リテラシー」を定義した論文。その獲得のため、ここでは一例として学校と連携したワークショップの手法が紹介されている。
ミュージアム・リテラシーを身につけることは、現代情報社会で必要とされているメディアリテラシーの獲得にもつながると彼女は言う。博物館を利用できることが、現代社会におけるゆたかな学びへとつながるのだ。学校との連携だけに焦点が当てられているなど問題はあるが、ミュージアム・リテラシーという新しい概念を思い切って提起したという点では高く評価できるだろう。
ミュージアム・リテラシーを獲得するということは、様々な情報を読み解き、それを活用する能力を身につけること、また自分の持っている情報を伝える能力を身につけること、にほかならないミュージアム・リテラシーを育むことは、子ども達の学びを、よりゆたかで広がりをもったものへと発展させることにつながるのではないだろうか。pp. 15
ジョン・H・フォーク リン・D・ディアーキング/高橋純一訳
雄山閣 1992=1996年
来館者の博物館における体験を、3つのコンテキストからまるごと捉えようと試みた一冊。来館者一人ひとりの過去の経験、来館の理由を含む「個人的コンテキスト」、誰と来たか、あるいは集団としての行動に関わる「社会的コンテキスト」、そして博物館の空間それ自体を問題にする「物理的コンテキスト」の3つが重なり合ったところに、博物館の「ふれあい体験モデル(Interactive Experience Model)」があるとする。
博物館体験とは、博物館において来館者が経験するすべてのことに及んでいる。展示のみならず、トイレの場所、受付の人の親切さなどまで含んだすべてが、博物館体験となる。さまざまな実証研究から得られた知見をまとめ、徹底的に来館者中心の「博物館体験」を描き出している。
またこの本はカルチュラルスタディーズにおけるメディアのオーディエンス研究ともとれる。以下の「一般来館者の博物館体験」に関する9つの原則は、「博物館」と「来館者」を一般的な「メディア」と「オーディエンス」に置き換えても成立しそうだ。
1.個々の来館者は、それぞれ異なる方法で学習し、各自の持っている知識、経験、信念などのレンズを通して情報を解釈する。
2.すべての来館者は、博物館のメッセージを自分自身の理解や経験と一致するように個人化する。
3.すべての来館者は、自分自身のアジェンダと博物館に対する期待を盛ってやってくる。
4.多くの来館者が、他の人といっしょに(集団で)博物館を訪れるので、彼らが見たり行ったり記憶したりすることは集団によって媒介される。
5.来館者の博物館における体験には、解説員も警備員も売店業者も他の来館者も含まれる。
6.博物館には日常の経験では接することのできない物があるから、人々は博物館に引き付けられる。来館者はさまざまな方法でそれを「見に」来るのである。
7.来館者は、建築、雰囲気、臭い、音、感触等、博物館の物理的側面に強く影響される。
8.来館者はたくさんの体験に出会い、その中から小数のみを選択する。
9.来館者の注目は、展示の位置と館内の配置によって強く影響される。pp. 155-172