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ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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名前:
HIRANO Tomoki
職業:
大学院生
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井上征矢 穂積穀重 玉川信一ほか
『感性工学研究論文集』5(2) pp.17~24 2005年

美術作品の鑑賞構造を探るため、筑波大学大学院修士課程芸術研究科終了作品展を利用して、来館者を対象にアンケートを実施し分析を行った来館者研究。専門的な美術教育経験者/未経験者という区分で分析がなされた。
その結果、「美しさ」がもっとも「好感度」に影響しやすく、美術教育経験者では「面白さ」、未経験者では「テーマの伝わり易さ」「技術的な難しさ」も「好感度」に影響することがわかった。また、作品の注目箇所としては経験者はディテールを見ており、未経験者は顔など分かりやすいところを見ていた。ほかにも、アンケートの自由記述欄の充実度なども違った。
美術教育経験はたしかに鑑賞を規定するひとつの要素だと思うが、美術館来館者の中にこのような経験を持っている人は多くない。鑑賞構造がこれだけに規定されるわけではないはずで、それ以外の部分をうまく取り出せると良いのだが。
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奥村高明
『美術教育学:大学美術教科教育研究会報告』(26) pp.151-163 2005年

状況的学習論を手がかりに、宮崎県立美術館において子どもの鑑賞行動をビデオに録画し、それを観察した来館者研究。「よどみ」や「しかけ」がキーワードになっている。「よどみ」とは、作品の前に子どもたちの人だかりができる様子で、そこで対話が生まれる。「しかけ」とは作品の鑑賞のためのツールだが、子どもたちは必ずしもそれだけを見ていない。監視員、学芸員、ほかの来館者、「しかけ」、そして作品が等価なものとして相互作用して、鑑賞が生まれる。
鑑賞という行為がさまざまな状況に依存して起こるということが示されている。つまり、美術館で起こっているのは、来館者と作品との二項対立のようなものではないのである。来館者の周りにあるものすべてが、鑑賞資源であるといえる。

この研究は雑誌記事として

宮崎県立美術館/ユニークな鑑賞研究-作品も観客も仕掛けも、すべてが等しい教育資源
『ミュージアム・マガジン・ドーム』79 pp.30~33 2005年

にも紹介されている。
川嶋-ベルトラン敦子
『博物館学雑誌』25(2) pp.33-49 2000年

ピアジェの発達段階説にヒントを得たマイケル・パーソンズによる「美的感受性発達論」について、フランスの美術館における来館者研究を行いその有効性と限界を確かめようとする。パーソンズは、美術作品の「主題」「表現」「媒体・フォルム・形式」「判断」に関してできることが、第1段階~第5段階と発達段階を追っていくことで積層的に付け加わっていくとする。
その結果、発話の定性的な評価の曖昧性や、評定基準外の発話の存在などが問題として挙げられた。作品から想起された個人的体験や、美術館独自の環境に対する発話などである。美的感受性発達論では「もれてしまう部分」が、ミュージアム特殊な何かである、ということはできないか。

この第2点目の美術館独自の環境にかかわる発話は、当然、この評定表からはもれてしまうのだが、この評定表は、美術館における観客の体験の一部しか考察し得ず、美術館においてはもっと様々な観点から総合的に判断できる評定表が必要であることを示唆していると言える。pp.46
三好浩和 鈴木俊輔 臼井旬 奥出直人
『情報処理学会研究報告』2004-IS-87(13) pp.93-100 2004年

美術館の来館者が作品とインタラクションし、独自の見方を深めていくことができるツール「アトバム」「アートテーブル」「ペンツール」を紹介する。「アトバム」はアルバム型鑑賞体験記録ツールであり、作品を見て「ペンツール」でその印象を書き残したものが、通信機能で「アートテーブル」とリンクし、その場にいる来館者間で鑑賞体験を共有できる。
とても面白いツールだと思う。ここでポイントなのは、自分が思ったことを直感的に記録として残すことができるツールとしてのアトバムと、知らない人同士でもそれを共有し、多角的な視点から作品を眺めることができるアートテーブルの相互作用だ。
加野隆司 松本啓俊
『日本建築学会計画系論文報告集』454 1993年

博物館における鑑賞者のさまざまな鑑賞行動に適合した展示空間を作るための建築計画に関する論文。まず博物館の展示室の平面構成をモデル化し、その後、仙台市博物館での来館者アンケート調査やトラッキング分析により鑑賞行動と空間の相互作用を分析した。その結果、ツリー状の展示レイアウトにし、入口で展示全体のスペースを見渡せること、鑑賞者が立ち止まれるような“たまり”が必要なことが分かった。
空間の構成・レイアウトという側面から博物館の展示を見るという視点は面白いかもしれない。そこに、博物館の展示で来館者がどう振る舞うべきかについて、重視されているものが見えてくるのではないか。
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