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ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
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名前:
HIRANO Tomoki
職業:
大学院生
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合原祐美 上野淳 倉斗綾子
『学術講演梗概集. E-1, 建築計画I, 各種建物・地域施設, 設計方法, 構法計画, 人間工学, 計画基礎』1999 pp.65-66 1999年

東京都現代美術館において、複数の展示と付加空間(喫茶、ショップなど)への入室・退室時間と展示空間内での鑑賞軌跡・鑑賞行為について、来館者調査を行った研究。美術館の利用の仕方は多様であり、作品の属性、内容、他者が介在する複雑なものであることがわかった。
美術館の鑑賞行動を展示室内に限らなかったところがこの研究のオリジナルであるといえるだろうか。美術館への来館は複雑で多様、というのは分かりきったことであるが、そこから何ができるか、である。

美術館における来館者の行動は実に多様で、美術品の鑑賞だけでなく、付加空間での行動や体験等も重要であることが分かった。また、展示空間内での行動は、属性、作品の内容、他者の介在が影響しており、鑑賞行動、気づきの行動、迷いの行動、の連続で成り立っていることが分かった。pp.66
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河野美津子 佐藤隆二
『学術講演梗概集. D-1, 環境工学I, 室内音響・音環境, 騒音・固体音, 環境振動, 光・色, 給排水・水環境, 都市設備・環境管理, 環境心理生理, 環境設計, 電磁環境』1998 pp.361-362 1998年

美術館の展示室の視環境、すなわち、展示品の見え方や空間構成などについての調査研究から、美術鑑賞における評価を考える。美術館への来館頻度の異なる被験者5人に、主に3つの大きな項目に回答させた。項目は、「室の大きさ・空間構成」「室の仕上げ」「室の照明状況」である。
視環境という側面から展示室の中を見るという試みが面白い。たしかに来館者はそれぞれの作品を見に美術館に来ている場合が多いが、それ以外にもさまざまなものを見ているはずである。見るという行為を規定する環境の整備は重要であろう。

[…]いかに素晴らしい展示品と企画でも、展示品の見え方に不満を感じ、結果として展覧会全体に対して不満が残る場合が少なくない。これは、鑑賞者にとって適切な視環境が形成されていないことにその原因があるように思われ、不満の解消のために端環境に対する評価法の確立が必要となる。pp.361
田中康達 小野田泰明 菅野実
『学術講演梗概集. E-1, 建築計画I, 各種建物・地域施設, 設計方法, 構法計画, 人間工学, 計画基礎』1996 pp.389-390 1996年

国内で開催されている美術館のワークショップについて、美術関係の雑誌による調査を行い、その活動場所と活動内容から整理を行い、空間と活動の関係を考えようとしたもの。調査の結果、美術館内外での体験的活動、見学や探検、展示と関連した活動や実技演習まで、さまざまなワークショップの形態があることが明らかになってきた。空間としては、美術館はあくまで拠点である場合も見られた。
活動にこれだけの多様性があると美術館建築や空間の専門家は頭を抱えてしまうだろうが、ワークショップをカテゴリー別に整理したという点では有用である。

A:体験的活動(街・自然)(水戸、世田谷)
B:見学・観察(世田谷)
C:美術館探検(宮城、世田谷)
D:展示と連携した活動(リアス、目黒)
E:体験的活動(アトリエ)(宮城、横浜、世田谷)
F:鑑賞に関する活動(宮城、川村記念)
G:オープンアトリエ(宮城、リアス)
H:実技演習(町田、平塚)pp.389-390
山中理
『教職教育研究:教職教育研究センター紀要』6 pp.51-63 2001年

関西学院大学の博物館実習担当教員が、自身の経験として、美術作品の見方を獲得していった過程を語る。彼は7~8世紀の日本と中国の陶磁器が専門の学芸員であり、さまざまな作品から作者や時代、社会の顔を見いだしながら、作品を受容し評価することができるようになるには、展覧会を見に行き、作品を何度も見て、展示するようになって、何年も経た後のことだったという。
随想録のような内容でつかみどころがないが、ものから何かを引き出すこと、図版や映像ではなく、本物と向き合うことが、大切なことのようである。後半には、それができる学芸員になるための博物館実習の一例が語られている。

心を震わせる感動的な美術作品に出会い、その作品が持つ力をうまく抽き出すことが出来れば最高である。図版や映像などでなく、生のものと向き合うことが如何に素晴らしいか。作品を利用するのでなく、作品に敬虔な心で向き合い、その内包するものを解放する喜びを人々と分かち合いたいと思う。pp.51
奥本素子
『日本ミュージアム・マネージメント学会会報』10(1) pp.14~17 2005年

最近流行の「教育普及」とは違う方向での博物館の「普及活動」として、イギリスなどで採り上げられている「鑑賞者開発」(Audience Development)を紹介し、日本における「鑑賞者開発」の可能性について述べる。
ここでは、若者、高齢者、障がい者、外国人が挙げられ、物理的障害/精神的障害それぞれに対するアプローチの仕方が提案されている。普及といえば、既に博物館を訪れている来館者に対する教育普及というふうになりがちだが、ミュージアム・マネージメントにとっては、このような活動のほうが重要なのかもしれない。

鑑賞者開発は潜在的来館者(何らかの事情で現在博物館を訪れていない人々)の非来館理由を明らかにし、その障害を取り除いたり、現在訪れている来館者の博物館体験を豊かにしたりすることで再来館を促したりする、来館者増加のための戦略である。なぜこのような戦略が取り入れられたかというと、博物館を訪れない理由は多様であるという認識と、美術館や博物館にはまだまだ潜在的鑑賞者を多く抱えており、民主主義や公共サービスの観点から考えると積極的にこれら鑑賞者に働きかけなければいけないという背景がある。pp.14
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