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ミュージアムにおける学びとリテラシーについて
Profile
名前:
HIRANO Tomoki
職業:
大学院生
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松本栄寿
『電気学会誌』122(7) 2002年

科学技術博物館の歴史をひも解きながら、その背景、ストーリー、展示思想の変遷を見ていく。科学技術博物館は、貴重なコレクションが並ぶ「キャビネット」、技術の進歩を示す「科学技術史」、参加体験型の「サイエンスセンター」の3種に大別され、とくに科学技術史は発達史を展示する「インターナリストヒストリー」と、技術と社会とのかかわりを示す「エクスターナリストヒストリー」に分けられる。
オックスフォード科学史博物館やスミソニアンなど具体的な博物館を紹介しながら、科学技術博物館を系統立てて整理することに成功している。展示思想の移り変わりは、科学技術博物館に求められるものの変化を示しているといえるだろうか。

インターナリストヒストリーからエクスターナリストヒストリーへとひも解くと、研究対象が「モノから人へ社会へ」と移り広がる。展示内容も多様化し変わっている。「研究に基づく博物館展示をよく見て頂きたい」、そこから技術の根源も、技術の動機も、技術者の生きた道も、技術への反省も、技術倫理も学び取ることができる。pp.436
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尾崎圭司
『四国大学経営情報研究所年報』9 pp.23-30 2003年

美術の専門知識のない一般鑑賞者のために、「観点」を共有することで美術鑑賞を支援する仮想美術館ArtFinder 3を提案する。作品に対する自らの鑑賞結果(観点)をまとめて可視化し、自分の観点と関連する他者の観点を閲覧することができる。今回は、パーソンズの言う第2~第3段階の鑑賞者を、第3~第4段階に引き上げることが意図されている。
他者の観点を知ることで鑑賞能力が発達すると必ず言えるのか、どうなったら鑑賞能力が発達したことになるのか、微妙ではあるが、こういった可視化の方法は面白い。具体的な空間を持たない仮想美術館で、他者を意識することができるのは大きい。

杉林英彦
『美術教育学 : 大学美術教科教育研究会報告』(24) pp.161-171 2003年

三重県立美術館で行われた子ども対象のギャラリートークについて、アビゲイル・ハウゼンの発達心理学的測定法を適用し、鑑賞教育の評価方法を探る。小学生7人グループと講師にテープレコーダーを持ってもらい、ギャラリートークにおける言語活動全体を記録し、「思考ユニット(thought unit)」ごとに美的鑑賞の5つの発達段階を当てはめる。その結果、トークを進めるうち、子どもたちの発話に、より高次の(Stage I/II以上の)思考ユニットが増えていく傾向にあることがわかった。
この研究のオリジナリティは、講師の発話にも着目し、子どもたちの変化の要因を探ろうとしている点、具体的な美術鑑賞の場(美術館)における評価の適用を目指している点だ。回数を重ねていかないとまだよく分からないことは多いが、美術館における鑑賞教育の評価という考え方は面白い。

(1) Stage I:作品理解につながる鑑賞者個々の発見を促す発話や鑑賞者の発話内容の受容と確認に関する発話。
(2) Stage I/II:鑑賞者に複数の作品に関する比較を促す発話や他者の意見・考えと鑑賞者個人とを検討させることを促す発話。
(3) Stage II:鑑賞者個々の発話の根拠をもとめる発話や鑑賞者の考えをまとめた発話。また作品に関する一般的な解釈。pp.169
岸田恵理
『美術教育学 : 大学美術教科教育研究会報告』(16) pp.101-110 1995年

信濃美術館におけるギャラリートークのあり方について、イギリスの美学者ハロルド・オズボーンの『The Art of Appreciation』(1970)に基づきながら考えていく。オズボーンは芸術鑑賞を「理論的な知識の類ではなく、感情の放縦でもなく、獲得されうる技能である」としている。この論ではオズボーンの言葉を引きながら、作品「紅浅間有明月」を例に、どのようにギャラリートークで作品を語り、観者に伝えるべきか:芸術鑑賞における言葉の役割をケーススタディ的に考察している。
鑑賞を「獲得されうる技能」としたオズボーンの考え方は面白い。ただ、それがギャラリートークの語りでどのように実現されるべきかは、難しいところである。

芸術鑑賞への導入において、作品を分析することも、歴史的背景について語ることも有効であった。しかし鑑賞それ自体は、分析や知識の獲得とは別次元のものであり、美的感性的に作品の統一的な質を知覚することである。pp.109
武知秀樹
『中国四国教育学会教育学研究紀要』48(2) pp.162-167 2002年

広島県立歴史博物館の中世歴史展示(草戸千軒町)を社会化教育の教材とみなし、そこから問題点を抽出し、改善案として来館者が自ら問いを見つけることができるハンズ・オン展示を提案している。歴史博物館の展示の課題は、現代に使う道具と比較しながら見学するため、現代との比較をするだけで認識形成が止まってしまうという点が挙げられている。そこで、一般的な中世のイメージの転換を図る参加体験型の展示を作るという方向性で展示案が提案される。
歴史展示を社会化教育の教材とみなすことがどれくらい有効かは分からないが(この改善案が実際やってみてどうだったのかについては書かれていない)、歴史認識を形成する場として博物館を改善するという問題意識は同意できる。
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